ドミニクス バタオネ先生

Photo_567   Mr. Dominicus BATAONE---。インドネシア語講師。インドネシア・レンバタ島出身で、1931年5月生れの今年75歳。在日約30年。4月に本国へ帰国するという。バタオネ先生は、「INJ」(インターカルチュラル・ネットワーク・ジャパン=東京・新橋)の主任講師。お世話になった受講生達が4月1日(日)に東京都内のレストランに集まって「感謝会」を開く計画が進められている。それに先立ち3月3日(土)にお別れの特別記念授業が開かれる。「バタオネのちょばちょばインドネシア語」「バタオネのインドネシア語講座 初級」など著書も多く、インドネシア語を習った人ならば一度は先生の名前を耳にしているはずだ。が、私が先生にひかれたのは語学講座というより<クジラ>の関係からだ。レンバタ島では今も銛(モリ)一本でマッコウ・クジラ を追っている。クジラの話はテレビなどで紹介され、何冊もの写真集が出版されている。バタオネ先生はその世話役でもあった。

   バタオネ先生は毎年夏に<クジラの島>に帰っていた。レンバタ島Map_floresはバリ島より東に点々と連なる火山の島・小スンダ列島の東の果てにある。「レンPhoto_563バタ島ラマレラ村では今でも続く伝統クジラ漁があり、手漕ぎの舟に乗って手銛一本でクジラに挑む。捕ったクジラは天日干しにして、干し肉は自分達の食糧にすると同時に山の民の農作物と交換する“貨幣”にもなる」。ガイドブックは大概こんな風に島を紹介している。その島の歴史を遡ると、先生の祖先の兄弟は長男が政治を、次男が軍事を、三男が宗教を預かり、バタオネ家は次男の末裔となるらしい。いわゆる島の有力者である。私は南氷洋捕鯨の同行取材より、何かとクジラとの縁が続いている。レンバタ島へは行ったことはないが、読売・日本テレビ文化センターで偶然先生とお会いし、先生が島の出身とわかると、話題はインドネシア語講座より何時もクジラの話となった。横Photo_564浜で一緒にクジラ料理を楽しんだこともある。

  国立バジャジャラン大学大学院日本語学科終了。在ジャカルタ日系企業、バジャジャラン大学文学部助教授、在日インドネシア共和国大使館武官室勤務などを経て、1980年(昭和55年)の上智大学講師を皮切りに東京外国語大学、大東文化大学などでインドネシア語を教えるようになった。そんなバタオネ先生の経歴をたどれば、第ニ次世界大戦による日本のインドネシア占領政策が大きく影響している。先生は義務教育を終了後にオランダ系のエリート校に入学したが、間もなく戦争の勃発で日本海軍が上陸した。オランダ人はPhoto_565追放され、以後、ほとんどが日本式になった。日本語で最初に習ったのは軍歌だった。「守るも攻めるも---」「見よ東海の空明けて---」等々。戦争が激しくなると、ロームシャ(労務者)として働かされたり、自分達が食べるものもあまりないのに軍人に出さなければならなかった---。終戦半年くらい前から日本が負けそうだということは、オーストラリアの飛行機からまかれるインドネシア語のビラで感じていたという。日本がインドネシアを占領したのは3年半くらいだったが、言葉の面をはじめ、その影響は大きかったと回顧している。在日インドネシア共和国大使館勤務で日本に在住する前に、コロンボ計画の奨学金を受けて1971年(昭和46年)から一年間日本で研修している。こうした苦い体験をしたバタオネ先生だが、インドネシア料理を教える奥さんともども、大の親日家であることは自他共に認めるところである。Photo_566

  「バタオネのインドネシア語講座 初級」(めこん)の中に、趣味にまつわるこんな会話がある。---ジュンコ「ユミのように私も海外旅行が好きよ。外国人観光客にまだなじみのない地方なら、なおさらね」。ユミ「それなら、いつかレンバタ島の鯨捕りの村に一緒に行きましょう。ジュンコもきっと住民の生活ぶりや自然の美しさに強い印象を受けるとおもうわ」(Kalau begitu,kapan-kapan kita pergi bersama ke desa nelayan ikan paus di Pulau Lembata.)(242~243ページ)---。「ikan paus 」(イカン・パウス)がクジラを意味するインドネシア語である。バタオネ先生の帰国先はレンバタ島から少し離れた「メナド島」というが、私は何時かレンバタ島を訪れ、銛一本でのマッコウ漁を見たいと思っている。

□バタオネのインドネシア語★特別授業★ 講座番号=073LID01 日時=3月3日(土)10:30~12:00 受講料=2500円 教材=プリント配布 申込先=INJカルチャーセンター講座申し込み。

□バタオネ先生への感謝会 日時=4月1日(日)正午から2時間程度 場所=未定(都内レストラン) 会費=7000円程度。参加希望者は①氏名(ふりがな)②住所③電話番号④メールアドレス⑤バタオネ先生とのご関係(例=2000年4月INJ初級講座受講---など)。参加希望者には後日、詳細を連絡。問合先=INJカルチャーセンター。

  写真=ラマレラ・生命の物語「クジラがとれた日」(小島曠太郎・えがみともこ著 ポプラ社)より

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